冬の寒さが厳しくなると、ニュースなどで頻繁に耳にするようになるのが「ヒートショック」という言葉です。暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移動した際の急激な温度変化が、血圧の乱高下を招き、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすこの現象。
実は、このヒートショックのリスクを「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」がさらに跳ね上げてしまうことをご存知でしょうか。
「たかがいびき」と軽く見られがちなSASですが、冬場の健康管理においては命に関わる重要なファクターとなります。今回は、意外と知られていないSASと冬の健康リスクの関係、そして免疫力への影響について解説します。
なぜ冬場は危険?SASとヒートショックの「二重の血圧負荷」
ヒートショックの最大の原因は「血圧の急変動」です。冬の寒さで血管が収縮して血圧が上がっている状態で、入浴などの温度変化が加わることで血管事故が起こりやすくなります。
ここに、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が持つリスクが重なると、事態はより深刻になります。
1. SASによる「夜間高血圧」と「モーニングサージ」
SAS患者は、睡眠中に何度も呼吸が止まることで体内の酸素が不足します。すると、酸素を補おうとして心臓が激しく働き、交感神経が優位になるため、寝ている間も血圧が高い状態(夜間高血圧)が続きます。
さらに危険なのが、起床時に血圧が急上昇する「モーニングサージ」です。SAS患者はこの傾向が強く、冬の寒さが加わることで、朝のトイレや洗面所での脳卒中・心筋梗塞のリスクが健常者よりも格段に高まってしまうのです。
通常の冬のリスク: 寒さによる血圧上昇
SAS患者のリスク: 寒さ + 酸素不足による血管ダメージ・持続的な高血圧
このように、SASを放置することは、血管にとって「常に綱渡り状態」を作り出しているのと同じと言えます。
「たかがいびき」は禁物!血圧管理としてのSAS検査
「自分はいびきをかいているだけ」と思っていませんか?
大きないびきは、気道が狭くなり、空気が通りにくくなっている証拠です。そして、そのいびきが突然止まるようなら、SASの可能性が極めて高いと言えます。
冬場の突然死を防ぐためには、血圧の数値だけでなく、その根本原因となりうるSASの治療が不可欠です。
大きないびきを家族に指摘される
日中の強烈な眠気
夜中に何度もトイレに起きる
血圧の薬を飲んでも数値が下がりにくい(治療抵抗性高血圧)
これらに当てはまる場合、放置せずに専門の医療機関を受診しましょう。SASの治療(CPAP療法など)を行うことで、血圧が安定し、結果として冬場のヒートショックのリスクを低減できることが多くの研究で示唆されています。
感染症の季節だからこそ注意!睡眠不足と免疫力低下
SASの影響は、心臓や血管だけにとどまりません。冬に流行するインフルエンザや風邪などの感染症リスクとも密接に関係しています。
質の悪い睡眠が免疫細胞を弱らせる
SASによる低酸素状態と頻繁な覚醒は、深い睡眠(ノンレム睡眠)を妨げます。私たちの体は、寝ている間に免疫システムをメンテナンスし、強化しています。しかし、SASによって睡眠の質が低下すると、その修復機能が十分に働きません。
結果として免疫力が低下し、以下のような悪循環に陥る可能性があります。
SASによる睡眠不足
免疫力の低下
インフルエンザや風邪に感染しやすくなる
喉の炎症で気道がさらに狭くなり、SASが悪化する
特に冬場は空気が乾燥し、ウイルスが蔓延しやすい季節です。マスクや手洗いといった対策に加え、「良質な睡眠」を確保することが、最強の感染症対策となります。
まとめ:冬の命を守るために、いびきのケアを
冬場に増える心筋梗塞や脳卒中、そして感染症。これらから身を守るためには、温度管理やうがい・手洗いだけでなく、「睡眠(呼吸)の管理」が非常に重要です。
もしご自身やご家族に、激しいいびきや呼吸の停止が見られる場合は、寒さが本格化する前に一度検査を受けてみてください。SASの治療は、単なる睡眠の改善ではなく、冬の命のリスクを減らすための「積極的な予防医療」なのです。


